生み出すコンテンツに通底するもの

過去の話

17歳のころ、友達が性に関するトラブルに巻き込まれました。「こういうトラブルって、誰でも起こる可能性があるけれど、誰でも回避することもできる。この友達は、何があったら回避できたんだろう」と思ったことが、性の健康の道に入る最初のきっかけになりました。

大学は文系に進み、社会学を学びました。「人間関係の学問」とも「ひねくれ者の学問」とも言われる社会学は、「人がふたりいればそこに社会が生まれる」というところから出発する、人間関係や人と人の間で何が起こっているか(どういう相互作用が働いているか)を考察するような側面もある学問でした。

大学時代のボランティア活動で、性の健康に関するインカレ団体の事務局長をしていました。先輩たちや他のメンバーは医学部や看護学部に通っていて、将来は国家資格を取って医療の道に従事する人たちばかり。医学的な観点からの性教育が中心的に行われていた団体でした。個人的にもそういう知識を仕入れて語っていくことは当時は楽しいと思っていましたが、医学の基礎的な素養の無い自分には一定以上のレベルには達せられないな、という想いもありました。

通底するキーワード① アティチュード

大学時代や20代の頃は、個別相談の活動を随分やっていましたし、個別相談の活動をしたい人たちに相談の基礎的なスキルを伝えたりもしていました。いま思うとこの頃から「やなぎーに聞いてほしい」「やなぎーになら話せる」と言ってくれる相談者もそれなりに多くいてくれたのですが、それは「否定しない」「威圧しない」「聴き切る」「決めつけない」といった態度が自分に身についていて、それによって安心感を与えていたからだろうと思います。

今その頃のことを振り返って態度の重要性を理解できている一方、それを獲得することは簡単ではないということも知っているからこそ、今、性の健康イニシアチブは「アティチュード研修」を提供しています。「アティチュード(態度)」は、私にとってはとても大きなキーワードです。

そしてアティチュードは、相談を聴く人や対人援助をする人だけのものではなく、生活者としての個人の人も持っておくと日常生活の人間関係がさらに良いものになったり人への対応が優しくなったりするものでもあると思います。

通底するキーワード② 人間関係

人間関係や人と人の関係性などを考える時に、社会学をやってきた経験はそれなりに生きているように思います。人間関係やコミュニケーションは人が生きるうえで絶対的に欠かせないもので、そこに自然に注意が向く身体感覚が自分の中に作られています。

たくさんの相談を聴いてきた経験の中で、人間関係について考えてきました。その経験を通じて、相談事の中に透けて見える人間関係の機能不全みたいなものや、それをどう解きほぐすかということが、分かるようになってきました。

また、人間関係の相互作用の中には、「しつこくするより突き放すほうがむしろ相手はこちらを気にして寄ってきてくれる」「見かねて細かく世話を焼くことがかえって相手をダメにしてしまう」などというような力学が働いていて、その力学に逆らわず味方につけることで状況を変えていく方法も分かるようになってきました。

私の活動は「それって性教育なんですか?」と言われることも多々あります。避妊や妊娠、性感染症といった、医学や身体周りのトピックをあまり取り上げないという意味では性教育っぽく感じられないのかもしれませんが、性教育が本来取り上げるべき一丁目一番地(人間関係)をテーマにしていると自分では思っています。

通底するキーワード③ 自己、自己決定

人間関係を考えるうえで、相手のことよりも先に自分のことを考えないといけないと思うのです。自分がブレたら、人との関係性もブレます。だからまずは、自分で自分を満足させられる・自分で自分の機嫌を取れる・自分は自分でいいんだと心を落ち着けられる、そんなふうに自分自身を築いていけることが大事です。そうでないと他人に自分の人生の主導権を握られてしまうから。「自己」や「自己決定」など、自己をどう確立して、どう自分のことを自分で決めていくか(自己決定していくか)という観点も、私が生み出すコンテンツのなかで大事にしているキーワードのひとつです。

通底するキーワード④ 感情

人間にとって感情はとても大事です。友達に貸した6,000円が返ってこないがために、何十万円もかけて裁判を起こす人だってこの世にはいます。そこに論理的な整合性はありませんが、「返ってこないことが嫌だ」という感情がすべてを動かします。感情を甘く見てはいけないと思うのです。逆に言えば、状況がどんなに悪くても、感情が納得して受け入れられるのであれば問題にはならない、とも言えます(クレーム対応という活動には、感情を納得させるという側面もありますよね。そういうことです)。

論理的に整合性がある。きちんと説明ができることをやる。という理論的な面と同じくらい、感情を丁寧に大事に扱うことを心がけたいと思います。感情的なものを大事にするということも、私が生み出すコンテンツの特徴のひとつです。

通底するキーワード⑤ 性の健康

これは一番目に持ってきてもいいくらいの中心的なキーワードでもあります。「性の健康」とは、性的な事柄において良好・幸福な状態を指す言葉です。一方で、何が良好・幸福なのかは、個人によって少しずつ違います。だから、自分は何を良好・幸福だと思っているのかを自分が知っていることが、性の健康を獲得するうえで大事になります。これは上記③などとも関わってくる話です。

また、「性的な事柄における健康」の中には、カップル関係の良好さも含意されることは想像に難くありません。カップル関係の良好さは、上記②の人間関係の話でもあります。そしてこの記事でも書きましたが、性交渉がうまくいくかどうかという話とも関係してきます。

性の健康について考えていくと上記①~④のキーワードは大変深く関わってきます。「性の健康」はこの記事で挙げているキーワードをすべて網羅できる概念という見方もできるでしょう。

私の活動は分かりづらいとよく言われますが、その根底にあるのは、

・アティチュード

・人間関係

・自己、自己決定

・感情

・性の健康

といったキーワードです。

これらを大事にして講演や研修などのコンテンツをこれからも作っていきたいと思います。

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